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スマイル2 再会 03

last update Last Updated: 2025-12-23 10:28:15

「みんな、お腹空いたでしょ? ゴメンねっ、すぐご飯にするから、お手伝いお願いね!」

 ミューはアイツ等と共に施設の中に消えて行く。

「ちょっとー、アンタも来なさいよー!」声だけが施設から聞こえて来た。

 俺、子供たちより扱い悪くないか?

「お兄さん、早く早くー!」

 ツインテールの女の子と、坊ちゃん刈りの男の子が俺を迎えに来た。

 背中を押され、手を握られ拉致られる。

「ミュー先生、お兄さん連れて来たよー!」

「有難う」ミューが二人に向かって微笑んだ。「じゃあ、みんなでスプーンの用意してくれる? お兄さんから包み受け取って、持ってきてくれるかな」

 施設の食堂の椅子に案内され、座らされた。

「お兄さん、はい、どうぞ! お買い物手伝ってくれて、有難うございました」

 スプーンを手渡され、さっきのボッチャン刈りの男の子に礼を言われた。「あ、あぁ、別に。大したことはしてねえから」

 って、待て。

 なぜ俺はこんなトコに座っているんだ?

 俺は施設の立ち退き要請――つまり、ここにいる全員を追い払いに来たのに!

「――オイっ、俺は……」

 立ち上がって話を続けようと思ったら、ミューや他の子供たちが皿を持ってやって来た。

 皿の上には、オムライスとコロッケが乗っている。

 手分けして同じものが一斉に配られ、大きなテーブルはオムライスとコロッケの乗った皿で埋め尽くされた。

「さぁ、みんなで食べましょう! もう、手は洗いましたか?」

「はーい!」

「それでは今日も、楽しく生きていることと、おいしいご飯が食べられることに感謝して……いただききます」

「いただきまーす!!」

 全員が両手を揃えて、神様ありがとうございます、と一礼した後、おもむろに貧相な昼食を食べ始める。

「お兄さん、ちゃんと『いただきます』して、神様にお祈りしなきゃダメなんだよ」

 天然パーマが掛かったチリチリ頭――サルみたいな男の子が、黙ってこの場を見つめている俺に説教を始めた。「ミュー先生のオムライス、おいしいんだよ! お兄さんも一緒に食べよう。ご飯はみんなで食べたら、もっともっとおいしいくなるから!」

「あ、ああ……」

 流石の俺も、子供に向かって反論するのも気が引けたから、仕方なく祈るフリをした。

――ミュー、俺様に跪け、跪け×∞

  処女を俺によこせ×∞……

 俺はミューに思念が届くように願いを込めた。

 信仰心の欠片も持ち合わせていない俺は、神に向かって祈ったりしない。

 だって、俺が神だから。

 金と権力があれば、なんでも出来るからな。

「はい、よく出来ました。もう食べてもいいですよ」サル男子が俺にOKサインを出す。

 なぜ俺様が仕切られなきゃならない?

 しかし、俺にはミューを含め、施設の子供たちを追いだすミッションがあるんだ。

 それが無事推敲されるまでは我慢だ。

 俺って偉いなぁ。こんな屈辱、普通耐えられないぞ。

 仕方なくオムライスを食べてやろうじゃないか。

 用意されたスプーンですくって食べると、ふんわりとした半熟卵の優しい味と、それに絡み合うデミグラスソースの絶妙な味わいが舌を刺激した。

 これはうまい。

「お兄さん、おいしいでしょ」

「ああ、確かにうまいな。どこのシェフが作ったんだ?」

「作ったのは、ミュー先生だよ。今日はコロッケの特売日だから、特別にオムライスとコロッケが食べれる日なんだ!」

 オムライスのご飯粒を口にくっつけたまま、彼は満面の笑みを零した。

 へー。ミューが作ったんだ。

 いい味付だな。

 高級レストランで食べれるオムライスより、うまいかも。

 そうか。さっき俺が荷物持ちの時に持たされていたお宝の正体は、コロッケだったのか。いい匂いしてたもんな。

 よし、そのコロッケとやらも食ってやろう。

 しかし俺の皿にコロッケは乗っていなかった。なぜだ……!

 子供たちのオムライスの皿にはコロッケが乗っているのに。

 もしや差別された?

 あ・り・え・ね――――っ!!

「おい、ミュー。俺様の皿にコロッケがないぞ」

 別にコロッケなんかどうでもいいけれど、差別に腹が立った。

 普通、この俺が優先だろ?

「仕方ないでしょ。アンタのせいで時間通り出られなかったから、子供たちの分しかコロッケ買えなかったのよ」

 ミューの皿にもコロッケが乗っていなかった。

 するとサル男子がコロッケを半分に切って、俺の皿に置いてくれた。「お兄さん、半分あげるよ」

 それを見ていたミューの隣に座っていたツインテール女子も「先生、半分あげる」と言って、ミューの皿に置いた。

「リカちゃん、リョウ君、ありがとう」

 ツインテール女子(リカ)と、サル男子(リョウ)が、ミューの満面の笑顔に応えるように、笑顔を零す。子供たちには優しい笑顔をみせるくせに、ミューは俺の方を向いた途端に険しい顔をする。「アンタも、ちゃんとリョウ君にお礼、言いなさいよ」

 絶対、俺の時とガキ共に接する態度、違うよな。

 腹立つ――――!!

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